丹頂と黒出目金と金魚老人。
「金魚は上から覗くもの」というのは、ガラスなど庶民の手の届くものではなかった時代の名残りだが、庭の石臼が水槽の我が家では、今でも金魚は上から覗くものだ。
丹頂は、白い体に真っ赤な頭頂部で、コケに覆われて薄暗い環境のなかでも良く映えて美しい。日の丸カラーでもあって、パトリオティックで日本人の心をくすぐる。なにより上からの姿が最高に美しい。
そして金魚すくいの人寄せパンダ、「出目金」。
出目金は“黒”にかぎる。
黒出目金は、金魚であり金魚の影のようであり、紅白の「丹頂」の引き立て役として最高だ。
いや、一緒に泳がせてみると、派手な丹頂が“黒”のデメキンの引き立て役かもしれない。
水槽の中のアールデコ、黒出目金はスタイリッシュだ。
さて、ここ数年、完全日陰の裏庭の水槽で、ビオトープとシャレ込んでメダカなど飼ってみたのだが、水辺というのは日なたの代表のような環境で、睡蓮など日陰では観葉植物化してしまった。メダカはなんとか四匹ほど生き延びて、氷の張った水槽で越冬して三月の声とともに泳ぎだした。
暖かくなったら、今年は、また金魚を迎えようと水槽にバクテリアなど入れて準備をしておいた。
「暖かくなったら」、毎年そんなことでやってきたのだが、疑問が浮かんだ。
氷の下でも金魚は生きていたし、メダカも越冬を終えて元気に動き出した。はたして暖かくなるのを待つ必要があるのか。
いままで、暖かくなって菌類が活発化する時期に金魚を飼い始めて失敗してきたのではないか。むしろ水温が低く菌類が活発でないあいだに金魚を迎え入れるほうが上手くいくのではないか。メダカをパイロットフィッシュだと考えれば、メダカは今、元気で、まだ肌寒い時期こそ移入の好機かもしれない。
そんなことで、当地では桜の開花宣言があったが、東京では雪が降ったという春の彼岸に新しい金魚を迎えた。
“丹頂”が三匹、“黒出目金”が三匹。体形が同じで泳力も同じ、共存を考えての配慮だ。
購入から既に一週間経過。魔の三日間を軽く超えて脱落者は無い。しかし、このところの予想外の急激な気温上昇で計画に狂いが。
黒出目金にチョット・・・・。
メダカは恥ずかしがり屋ですぐ隠れてしまって面白くないが、金魚はわりと人懐っこい。
今度のデメキンは、最初から人懐っこくて、指を出すとつついてくる。
なんてカワイイ奴なんだ。
庭で、金魚相手に、人の道、人生なんぞを説く、老人の今日この頃だ。
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