アメリカに於けるアーツアンドクラフト運動のパラドックス的開花。イーストレイクのシラサギのブラケット。
「全ての人が共有できないならば、我々は芸術に何の用があるだろうか」という言葉はイギリスのアーツアンドクラフツ運動の主唱者ウイリアム・モリスの言葉だが、手工芸による職人の充実感は、決して大衆にその製品をもたらすことにはならなかった。高邁な工芸の社会主義思想は、ほんの一握りのインテリとエリート層に自己満足を与えただけだった。
ウイリアム・モリスの理想は、海を渡ったアメリカで花開くことになる。誰にでも行きわたる「民主的芸術」は、職人の手仕事ではなく、むしろ製作過程の合理化と機械生産により、うつくしい物を大量に大衆に届けるという理想を実現した。まさにウイリアム・モリスやラスキンの思想のパラドックス的帰結といっていい。
機械化によるシンプルな造形は、簡素な美という新しい美的価値を生み、歴史上はじめて「大衆の所有する美」を実現した。まさに、産業革命による機械生産の、質の低下と労働の質的低下を嘆き、職人による手仕事の復活と美の大衆化を唱えた社会主義者ウィリアム・モリスの主張とは真逆なプロセスによる美の大衆化であり、美の民主化であった。
そして、ヨーロッパの歴史様式とは決別した新しい様式が見られる。
私が集めたかった物は、そういう「大衆が獲得した美しいもの」だ。なんちゃって。
19世紀末のアメリカのイーストレイクスタイルのブラケット。シラサギがデザインされた、とても粋な物。一つしかないのが残念だが、それはそれとして、そういう場所を選べばイイわけで、これはとても気に入っている。アールヌーボーのジャポニズムや、後のアールデコに通じるところもあって、とてもイイ。
アメリカのTaunton Massachusettsの古い農場の家の内部から回収された物。
イーストレイクスタイルのアンティークなブラケット。19世紀末。
今日も王国では労働者の歓喜の声がやまない。美は大衆の手にあります。ナンチャッテ。
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