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2013年2月16日 (土)

ギルテッドエイジの時代のオールドノリタケ。

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マーク トウェインは、風刺小説「ギルテッド・エイジ」を著し19世紀後半・南北戦争後のアメリカを、上っ面を金メッキしたようなインチキな時代、新興成金が横行する腐敗政治の時代とした。長くこの時代は金ピカの悪趣味の時代とされてきたが1980年代に入って、この時代が非常に豊かで面白い時代であったという見方が現れてくる。アメリカの芸術的趣味の黎明期という見方である。

オールドノリタケを語るに、その主な輸出先であったアメリカのことを語らないワケにはいかない。

アメリカの、ギルテッド・エイジ金ピカ時代は、1860年代から1890年代とするのが大方の見方だから、オールドノリタケの裏印・メイプルリーフ印が使われ始めた1891年(明治24年)のアメリカは、まさに金ピカ時代のピークにあったと言ってよい。

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アメリカの空前の繁栄と社交界の確立、夜毎開かれる絢爛豪華なパーティ。ファッションから芸術にいたるまで、ヨーロッパに代わってアメリカがパトロンとなる、変わり目の時代だったのです。

明治の日本にとって貿易の不均衡を正す唯一の手段は、日本の美術資産でした。蒔絵・七宝・絵画・多くの日本の美術品が海外に出て行きました。江戸末期まで大名家のお抱え絵師といったかたちで絵描きやら職人は数多く存在していました。徳川幕府の崩壊でこれらの職人は一気に職を失います。お雇い外国人の情報やら万国博の:経験から、外貨獲得の課題解決のため国策として、これらの職人が組織され輸出陶器などの制作現場に投入されていきます。

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明治維新前夜の慶應三年(1867)、幕府はフランス政府の要請でパリ万博に参加します。万博に出品された日本の陶器・漆芸・七宝はヨーロッパに一大旋風を巻き起こします。しかし、明治十一年(1878)のパリ万博までは物珍しさで売れていた日本の陶磁器も、それを境に売上を大きく落とす事になります。ディナーセット・コーヒー碗皿など高級日常陶器に於いては欧米の技術が遥かに進んでおり、欧米のマーケットは日本の陶磁器に厳しい目を向けていきます。

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メープルリーフ印が使われ始めた1891年(明治24年)頃の、日本の陶磁器産業の緊急課題は恒常的に売れていく日常陶器の開発でした。

また、この時期から当初、純日本風であった絵付けは洋風の物へと切り替えられていきます。瀬戸などの窯元との専属契約も始まり森村組は輸出商社からメーカーへとシフトし「世界ブランド・ノリタケ」の基盤が構築されていきます。

メイプルリーフ期の極めて初期の作。こなしきれていない洋陶器のスタイル、カップの底部の少しの歪み、当時としては極限と思われる磁胎の薄さは非実用的領域で痛々しい程。焼成後摺り合わせて整えた様な畳付け。完璧な白とは言いがたい灰色生地、石灰釉のピンホール。欠点と思われる全てが、ノリタケの歴史の証人であり、貴重な資料でもある。

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ノリタケがコーヒーカップの焼成に成功するのは明治16年を数年経過してからの事。

ニューヨークのモリムラブラザースから送られたフランス製のカップを研究するが、薄手の手付き磁器カップなど作った事の無い日本の窯元では作る事が出来なかった。そのうち、フランスのカップの縁先・カップの一番上の端に釉薬が付いていない事を発見した。日本の茶碗は仰向けに焼くので底・畳付けに釉薬が付いていない。伏せて焼く事で薄手のカップの形状の物を焼く事に成功したという。

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このカップの畳み付けが摺り合わせて調整されているのも釉薬の掛った部分を削り垂直を調整したものだろう。

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ノリタケ黎明期の意気込みと職人の情熱を雄弁に語ってくれる生々しい作。困難への果敢なる挑戦と、卓越した伝統技術。明治のダイナミズムに溢れた作。陶器が未だ宝石であり美術品であった良き時代の作。皮肉にもこれ以降、窯業の近代化によりこれらの熟練の技が薄れていく。

と、昔書いたブログをコピーしてみたけれど、どうだろう。オールドノリタケの醍醐味は、やはりこのメイプルリーフ期の物だね。

金点盛りアクアジュール薔薇絵ぺディスタル カップ&ソーサー

裏印 グリーン メイプルリーフ印 アメリカ向け輸出品

1891年頃(明治24年頃)

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コメント

絶妙なグラデーション!
ノリタケは筆で全て色を載せて行き、パディング技法を使わないと耳にした事が有ります。
如何したらこんなに美しいグラデーションが描けるのか?あの時代にタイムスリップ出来るなら覗いてみたいと思いますねぇ

投稿: boss | 2013年2月16日 (土) 17時49分

boss様
派手な金彩に眼がいって、カップの外まで、見ていなかったのですが、確かに薔薇の廻りの緑のグラデーションが、柔らかでとてもいいですね。これも、色の黒いを隠す苦肉の策ですが。
カップを側面から見ると歪んでいます。まだ完璧なカップを焼く技術がなかったのです。

投稿: 団塊堂主人 IWANA | 2013年2月16日 (土) 20時28分

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